• 2022.07.05
  • IT資格

「ジョブ型」でのスキルの証明とキャリアの作り方

IT認定資格関連コラム~第3回~

当社がゴールドパートナーとして活動しているCompTIA日本支局マーケティングディレクターの吉村睦美様からのコラム第3回をご紹介いたします。今回は、「ジョブ型」でのスキルの証明とキャリアの作り方について説明していただきます。











「ジョブ型」採用・登用という考え方が浸透

紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘
俳人 正岡子規の読んだ夏の俳句です。今年は早々に梅雨が明け、紫陽花の季節も終わってしまいましたが、紫陽花の色の移り変わりと同じように、人の心の移ろいやすさを表しているそうです。素晴らしいですね。
最近は、Twitterの隆盛と共に、短文で何かを表現することが見直され、俳句がプチ人気になっているそうです。私もチャレンジしてみようかしらと思っています。

さて、今回のコラムでは、移り変わり・・に関連して、最近の採用や登用方法の移り変わりについてお話をしていきたいと思います。

みなさんも、よく耳にされていると思いますが、「ジョブ型」という考え方が浸透し、採用や登用を進めている企業が増えてきました。そして、2020年の経団連からの指針の発表により、今まで以上に推進している企業が増えてきています。

従来、日本国内では、「メンバーシップ型」といわれる採用や登用が行われてきました。
例えば、長くエンジニアとして仕事をされていた方がセールスに登用されたり、また、Web関連のエンジニアとして働いていた方がデータセンター管理として登用されたりといった形です。
この考え方は、どちらかというと「その人材にその仕事をしてもらう」というよりは、「その仕事をできそうな人を充てる」といった感じがあります。
こういった場合、本人のモチベーションが上がらないのはもちろんのこと、個々の人材が自身のキャリアを描きづらくなります。

CompTIAが実施した「Evaluating IT Workforce Needs:ITワークフォースのニーズを評価する(2017年)」での結果をいくつかご紹介します。

本調査の中で日本からの回答者に注目をしてみると、約40%の回答者が現在の自身のキャリアと期待していたキャリアが合致しないと回答をしています。また、実に90%近くの方が、今後の自身のキャリアパスを明確に思い描いていないと回答をしています。

そして、ITキャリを目指した理由についても、自身のスキルやキャリアに一致したのでITキャリアを目指したというよりは、なんとなく・・・といったような印象も受けます。

もちろん、多くの仕事を経験できたり、まったく自分が考えていたキャリアと違う仕事をすることで、新たなキャリアを考える機会をもたらしたりといったメリットがあるかもしれません。しかしながら、なんとなく仕事に就く・・といったような感じができてしまい、本人にとっても、企業にとってもデメリットも多いことでしょう。






そして、これら全体の結果から、日本国内のITプロフェッショナルの仕事の満足度は、世界的にみて低いことがうかがえます。

本調査は、2017年に実施されたこともあり、先程の通り「ジョブ型」の考え方が推奨される以前の調査のため、現在では少し変化が出ているかもしれません。しかしながら、既に50年近く実施されてきた「メンバーショップ型」の考え方や実施方法に変化が出てくるまで少し時間がかかるのかもしれません。









「ジョブ型」とIT認定資格は親和性が高い

日本の多くの企業で実施されていた、いわゆる「メンバーシップ型」とIT認定資格はあまり親和性がありませんでした。
これは、個人が全体的なキャリアパスを描いていないため、特に認定資格を取得しようというモチベーションが起こりづらい面がありました。一方で、企業は、新たな業務に就いてもらうため「スキルの早期獲得」の方法として認定資格を活用しているケースは多くみられます。しかしながら、どうしても単発的な育成方法となってしまうことが否めず、育成する方もされる方も、いつまでこのスキルは必要となるのだろう・・といったような気持ちを持っていたりする場合があります。
そしてなにより、職務記述書/ジョブディスクリプションがあいまいなため、どんな仕事をするのかが明確になっておらず、必要とされるスキルやそれに伴う認定資格を選定することが難しかったのです。

これに対して、「ジョブ型」では、人のスキルに仕事がつくため、スキルを証明できるIT認定資格は、親和性が高いと考えられます。最近の採用情報を見ると、細かな職務記述書に加え、取得していてほしい認定資格の情報などが記載されているケースが多くなってきています。
特に、CompTIA認定資格は、仕事の一人前のスキルを定義した認定資格であるため、とても親和性の高い認定資格です。LinkedInでCompTIAと入力をしても、以前よりたくさんの求人情報を見つけることができるようなってきました。

認定資格取得のメリットと注意点

CompTIAが実施した調査でも、個人から見るとCompTIA認定資格の取得により、

  • 自身のスキルを証明できる
  • 認定資格で描かれているパスをたどることでキャリアパスを描くことができる
  • 仕事で必要とされるスキルを網羅することができる
  • 自信をもって仕事に取り組める
  • 自身の仕事に満足感がある

といったメリットがあります。
また、企業側からすると

  • 正しいスキルを持った人材を適切な仕事に登用できる
  • 仕事に就く前に、その人のスキルを見極めることができる
  • 社員の満足度が高まり仕事の質や生産性が向上する
  • 社員の満足度を受けて離職率が低くなる

といった効果があげられています。

一概に、「ジョブ型」になったのですべてが解決というつもりはありませんが、スキルを持った人材が平等に仕事のチャンスを得ることができ、そして、自身が望むキャリアでスキルを活かすことができることは、仕事をする上で望ましい姿です。
ただし、CompTIA IT Industry Outlook 2020の調査でもITマネジャーが求める上位のスキルとして、「チームワーク」や「幅広いスキル」があげられています。
チームの一員として働くコミュニケーションスキルや、ITプロフェッショナルとしての好奇心も同時に必要なスキルであることを常に気に留めておいてください。

筆者紹介

吉村 睦美
CompTIA マーケティング ディレクター
SI企業の営業、米国大手コンサルタント企業などを経て2005年よりCompTIA日本支局にて、認定資格の普及啓蒙のためのマーケティングを担当。認定資格を利用したITに携わる人材の発展のため、様々なプロモーション活動を行う。