当社がゴールドパートナーとして活動しているCompTIA日本支局マーケティングディレクターの吉村睦美様からのコラム第2回をご紹介いたします。今回は、人材に関するテーマとして最近よくあげられる「人的資本」に対して認定資格が果たす役割、そして、フレームワークの活用について説明していただきます。
さて、4月になりました。新年度を迎え・・という企業の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
・・と書いてみて、私の所属するCompTIAも、またよくお話をするパートナー企業も3月期決算ではない・・と思い調べてみたところ、3月決算、4月から新年度という企業、全体の約20%のようです。イメージより少ないですね・・
それなのに、なぜ4月は新年度で気持ちも新たに!と思うのかしらと考えてみました。おそらく全身からフレッシュさを溢れさせている新入社員のみなさんのせい(おかげ?)ですかね。その恩恵をいただき、気持ちも新たにがんばりたいと思います。
さて、前回のコラムでは、「IT認定資格が必要なわけ」と題して、採用される側、採用する側にとって、認定資格を取得することの意味についてお話をしました。今回のコラムでは、人材に関するテーマとして最近よくあげられる「人的資本」に対して認定資格が果たす役割、そして、フレームワークの活用についてお話をしていきたいと思います。
ここ最近、「人的資本」という言葉を耳にすることが多くなりました。「企業に属する人が持つ知識やスキルなどを企業の資本とする考え方」です。そして、現在、日本政府では、「人的資本」に関連する情報開示の指針が検討されています。
もちろん、「人的資本」の考え方には、どのくらいの知識とスキルを持っている人材がいるということを示すだけではなく、これを習得するための企業としての育成制度などが含まれています。この人材の持つ知識やスキルが、労働力となり、企業の価値に貢献できる要素として考えられています。
この知識とスキルを情報にするためには、>どのように可視化していくのか、またどのように同じ指標で可視化していくのかが、課題となります。
ある企業では、セキュリティを理解し、この業務を行える人は全体の60%います、と言っています。別のある企業では、CompTIA Security+を取得している人は全体の50%です、と言っています。では、どちらがより可視化していると言えるでしょうか。
もちろん後者です。CompTIAに限らず、すべての認定資格は、どのようなスキルを持っている人を対象としているのか、そしてどのようなスキルを習得することができるのかを明文化しています。
例えば、CompTIA Security+の出題範囲を少しご紹介すると、右記のような項目が挙げられています。
認定資格の最も大きな役割は「スキルの証明」です。これは、もちろんスキルの可視化にもつながります。
CompTIAは、全世界共通のスキル指標に基づいて認定資格が運営されているため、スキルをグローバルに可視化することができます。
米国国防総省は、CompTIA認定資格をグローバルで取得されている最大組織の一つです。組織内で人材が移動した場合、また新たに採用をした場合、どのくらいのスキルを持っているかは認定資格を通して共通の基準でお互いが理解できます。
米国国防総省での情報保証の役割を担う人材に必須とされるCompTIA認定資格
日本国内でも、グローバル展開されている企業では、CompTIA認定資格を採用されているケースが多くみられます。日本でも、米国でも、例えばセールスのスキル指標として採用されている場合、同じ業務を遂行するスキルを有しているとお互いに理解しあうことができるからです。
さて、この人的資本ですが、単に人材にスコアをつければよいと言うわけではありません。如何に人材を企業価値に結びつけていくのかが重要なポイントとなります。
そのため、企業の中長期的なゴールを見据え、これらを達成するためにどのような人材を必要としているかの棚卸しが必要となります。その上で人材を育成や採用をしていくのですが、ここで役立てていただきたいのが、各機関から提供されているフレームワークです。
サイバーセキュリティ人材を育成しようとした場合を例に取って考えてみたいと思います。サイバーセキュリティ人材を育成することは、企業価値を維持していく上でもとても重要なことです。企業としてどこまでの人材を揃えて対策をしていくか、その上でどこから外部パートナーと協力していくかなどを検討する際に、漠然とサイバーセキュリティ人材を育成しようと検討をするのではなく、様々な機関が提供しているフレームワークを参照することをお勧めします。
サイバーセキュリティに関しては、グローバルでさまざまな企業や機関が参照しているNICE(National initiative for Cybersecurity Education)フレームワークがあります。
米国国立標準技術研究所(NIST)が主導する「NICE: The National Initiative for Cybersecurity Education」は、サイバーセキュリティの教育、トレーニング、人材育成の取り組みに重点を置き、米国政府、教育機関、民間企業の連携で構成されています。このフレームワークでは、サイバーセキュリティ関連するさまざまなタスクや必要とされるスキルが定義され、サイバーセキュリティ人材を検討する上では、大変参考になるフレームワークです。
NICE(National initiative for Cybersecurity Education)
CompTIAでは、NICEフレームワークに対して、CompTIAが提供する認定資格とのマップを提供しています。これにより、どのようなタスクの人材に対してどういったスキルを持たせるべきか、そして仮にCompTIAでその育成をする場合には、どのような認定資格を活用することができるかを検討することができます。
National initiative for Cybersecurity Education(NICE)とCompTIA認定資格の親和性
また昨今、多くの企業で取り組まれているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。誤解がされているケースを多く見ますが、例えば人事部門に人事管理ソフトを導入することがDXのゴールではありません。
ITを活用して企業としての価値を向上させていくことがその本質であり、上記のような導入を進めることで、今までの業務をITに置き換えることにより社内の人材を別のよりクリエイティブな仕事に活用したり、顧客に新たな価値を提供したりすることが本質と言えるでしょう。
DXの人材育成における認定資格の活用については、またどこかの機会でご案内できればと思いますが、CompTIAでは、DXを推進する上で必要となる業務とスキルのワークフローを公開しています。
DXをワークフローで考え、資格を紐づけてみる
なんとなく、DXを推進していくのではなく、自社の業務を棚卸し、自社のゴールに沿った戦略をたて、その中でどのような人材が必要なのかを検討いただくことがで重要です。DXの本質を見据え、企業価値を向上させるための人的資本を育成する上での参考にしていただければ幸いです。
スキルを習得するための学習環境を整え、業務を遂行し、それにより生まれる企業のゴールを意識させることで、「人的価値」はより強いものとなり、長い間、企業に価値をもたらすものと考えています。
吉村 睦美
CompTIA マーケティング ディレクター
SI企業の営業、米国大手コンサルタント企業などを経て2005年よりCompTIA日本支局にて、認定資格の普及啓蒙のためのマーケティングを担当。認定資格を利用したITに携わる人材の発展のため、様々なプロモーション活動を行う。