• 2023.06.14
  • サイバーセキュリティ

どうなる?2023年以降のサイバー攻撃情勢予測

セキュリティに課題を抱える企業を対象に独自のセキュリティサービスを提供されている、株式会社CISO 代表取締役 那須慎二様によるコラム連載を開始いたします。
今後の掲載予定トピックは以下のとおりです。ぜひご期待ください。

①どうなる?2023年以降のサイバー攻撃情勢予測(今回)
②DXの発展とセキュリティリスク
③Web3.0の発展とセキュリティリスク
④Chat GPTの利用に伴うセキュリティリスク
⑤攻撃者の侵入経路
⑥具体的な攻撃シナリオ
⑦特に気をつけてほしいサイバー攻撃(ランサムウェア)
⑧特に気をつけてほしいサイバー攻撃(Emotet)
⑨セキュリティエンジニアに必須となる「ネットワーク」基礎知識その1
⑩セキュリティエンジニアに必須となる「ネットワーク」
基礎知識その2

※内容は変更の可能性がございます

第1回の今回は、2023年以降のサイバーセキュリティ上の脅威を予想していただきます。

2023年以降のサイバー攻撃3つのポイント【セキュリティコラム】

今年も早いもので半年が経過しました。私たちを3年間も苦しめ続けてきた新型コロナウィルスは5類に移行。
ようやく日常生活は落ち着きを取り戻してきていますが、インターネット空間では落ち着きを取り戻すどころか、益々サイバー攻撃が激増しています。企業の大小に関わらず、ネットにPCやスマホ端末を接続している全ての企業が、いつ被害に遭ってもおかしくない状況です。

今後のサイバー攻撃も残念ながら減ることはなく、コロナ禍で作り上げた攻撃の足場を利用して、益々仕掛けを強めてくるでしょう。

2023年以降に起こるであろう、サイバー攻撃の情勢をまとめてみます。

①サイバー攻撃は国家的・ビジネス的に益々拡大する

ロシアーウクライナ戦争が長期化すればするほど、人員や武器の消耗が抑えられるサイバー空間上での戦いは激化します。
サイバー空間は地上や空、宇宙空間と同様に、国家存亡に関わる重要な場所ですので、国家としての覇権を握るためにも、確実に抑えるべき場所になります。

今後益々、独裁諸国(ロシアー中国ー北朝鮮)vs 民主主義国(ウクライナーNATOーアメリカー日本)の対立構造がはっきりし、サイバー攻撃による機密情報や重要情報の奪取、システムの破壊活動等が益々激しくなります。
加えて貧困国は、外貨を稼ぐためにも金銭窃取(ビットコインなどの暗号資産)を目的としたサイバー攻撃を更に強化していくことが予想されます。

また、サイバー攻撃はビジネス的にも旨味があると認識されたため、今後益々拡大していくことも予想されます。
2023年以降、サイバー犯罪組織が益々ヒエラルキーをはっきりさせるための組織固めを行い、役割を明確にした上で攻撃を仕掛けてくるでしょう。

また、ビジネス的に拡大する要因の一つとしては「攻撃者にとって有効なインフラが整った」ことも挙げられます。
ハイスペック端末の利用や、Wi-Fi環境や通信回線の高速化、効率的な攻撃アルゴリズムの開発、Chat GPTに代表される生成型AIを用いた攻撃パターンの形成等、サイバー被害に遭うまでのスピードが早まっていくことでしょう。

②「サイバー版ロシアンルーレット」の回転が早まる

「サイバー版ロシアンルーレット」とは、脆弱性が既に発見されているVPN機器に対して、脆弱性を突かれて既に侵入ができる状態である組織が、手当たり次第にサイバー被害に遭うことをいいます。
既にリボルバーに弾丸が込められている状況にあり、あとはいつ撃ち抜かれてもおかしくない状態を「サイバー版ロシアンルーレット」と名付けました。

特に日本市場で多く利用されている、Fortinet社のVPN機器を活用している企業は注意が必要です。
既にIDやパスワードが窃取され、いつでもログインできる状態にある場合、攻撃者がいつトリガーを弾いて攻撃モードに突入するか、誰にもわかりません。実際に攻撃モードに移るスピードが早くなり、被害が増える恐れがあります。企業がサイバー被害の可能性に気づき、対策の手を打つ前に手当たり次第に攻撃に出る可能性もあるため、注意が必要です。

③スキルの低いサイバーチンピラの増加で、破壊活動が増加する

サイバー攻撃が儲かる市場としての認知が拡大すると、それに便乗した末端グループ(サイバーチンピラ)が増加する可能性は高まります。
サイバービジネスは組織化が進み、ダークサイトにさえアクセスできる環境さえあれば、スキルがなくてもサイバー攻撃に参加できるようになりました。スキルの低いサイバーチンピラは、ビジネス化されたサイバー組織のヒエラルキーの中で、「実行犯」として末端でツールを動かして、収益を得ようとします。

厄介なのが、スキル不足が原因で、幹部である上位者の意図を汲み取ることができずに、傷口を広げてしまうようなケースが出てくることです。
例えばデータを暗号化するランサムウェア。
攻撃ツールとしての利用方法を誤り、データを2重3重に暗号化してしまい、修復不可能な状態にしてしまう、などです。
こうなってしまうと身代金要求ができなくなり、本来の目的が果たせなくなります。ビジネスではなく、単なる「破壊活動」となります。

以上のように、2023年以降の情勢も、サイバー攻撃による被害拡大は増加の一途を辿るでしょう。

いつ自社の身に降りかかってきてもおかしくない、という想定のもとで、セキュリティ対策強化を継続していただければと思います。

筆者紹介

那須 慎二(なす しんじ)
株式会社CISO 代表取締役

国内大手情報機器メーカーにてインフラ系SE経験後、国内大手経営コンサルティングファームにて中堅・中小企業を対象とした経営コンサルティング、サイバーセキュリティ・情報セキュリティ体制構築コンサルティングを行う。
2018年7月に株式会社CISO 代表取締役に就任。人の心根を良くすることで「セキュリティ」のことを考える必要のない世界の実現を目指し、長年の知見に基づく独自のセキュリティサービス(特許取得 特許第7360101号)を提供している。 業界団体、公的団体、大手通信メーカー、大手保険会社、金融(銀行・信金)、DX関連など業界問わず幅広く講演・執筆多数。近著に「知識ゼロでもだいじょうぶ withコロナ時代のためのセキュリティの新常識(ソシム)」あり。